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「訴訟手続におけるコンピュータで読取り可能なデータの使用」
UNClTRALの質問書に対する各国政府の回答の分析(1)
A. コンピュータで読取リ可能な形式に記憶されている記録
質問1.
「コンピュータで読取り可能な形式(例えば、磁気デープ、デイスク等)で記憶されている、または記憶された取引の記録(record of transaction)は、民事、刑事および行政訴訟手続において証拠能力を有しまずか?訴訟事件の証拠として提出されたデータの証拠価値を評価するのは事実審理担当者(裁判官、陪審)に委ねられているにしても、貴国の法廷では、一般に、このようなデータはすべて証拠能力を有するか否か、回答して下さい。」
回答の概要
多数の国の証拠法は、すべての関連データを記録の形式に関係なく証拠能力を有するものとして取扱うという一般原則にもとづいており、したがって、コンピュータに記憶されている、またはコンピュータで読取り可能な形式に記憶されている記録を証拠として提出するのを妨げるものは何もないことが示されている。これらの国の法体系では、法廷が、コンピュータ記録の信頼性(creditability)について、すべての状況に照らして、自由に評価することができる[オーストリア、チェコスロバキア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ホンジュラス、日本、メキシコ、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、ユーゴスラヴィア、ザンビア]。しかし、これらの国の回答の中には、コンピュータ記録が再生(reproduce)される場合、これが謄本(copy)であると見做され、法廷は、より一層信頼できる証拠となる書類の提出を要求することができる[オーストリア、フィンランド、スウェーデン]。
コモンローの伝統を受け継ぐ法体系の特徴として、これらの国の回答によると、コンピュータ記録は、ある一定の基礎事実(fundation facts)が確立していることを条件として、認められている。この基礎事実は、一般に、コンピュータ記録を作成するために使用する方法(method)と装置(equipment)に関連するものであり、この記録が信頼できるものであることを示さなければならない[オーストラリア(一部の管轄地域)、フィリピン、英国、米国]。けれども、一部の法体系では、コンピュータ記録が普通のまたは通常の営業の過程で維持されていることが示されれば十分である[オーストラリア(他の管轄地域)、カナダ]。証拠に関するコモンローの規則にみられるコンピュータ記録の証拠能力に関する規定[オーストラリア、英国]は、すべての関連データが原則として証拠能力を有するという法体系におけるのと基本的に同じであるが、証拠として認められた]ンピュータ記録は、コモンロー法廷または陪審によって証拠価値が評価されることを示している。
(1) UNCITRAL YEARB00K 1985,United Nstions、 NewYork,1988,PP.362〜365。

 

 

 

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